
子供の寝息、実はいびきかも?
「夜、寝ている子供の呼吸がゴーゴーと鳴っている気がする…」
「苦しそうな音だけど、風邪でもないし、これって普通?」
そんな悩みを抱える保護者の方は少なくありません。とくに、乳幼児期〜小学生低学年くらいの子供には、「いびきのような呼吸音」が見られることがあります。かわいらしく聞こえる反面、親としては「これって病気?放っておいて大丈夫?」という不安がよぎりますよね。
実際に、子供のいびきのような呼吸は無害な場合もありますが、中には重大な健康問題のサインであるケースもあるのです。特に最近では、小児の睡眠時無呼吸症候群(OSA)などが注目されており、子供の発達や集中力、学習能力に悪影響を及ぼすリスクがあるとされています。
本記事では、「子供のいびきみたいな呼吸」の原因、放っておいてよいケースと注意すべきサイン、医療機関を受診すべきタイミング、そして家庭での見守り方までを詳しく解説します。
子供の健康を守るために、「おかしいな?」と感じたときの最初の一歩として、ぜひ最後までご覧ください。
子供の「いびきみたいな呼吸」の原因とは?
寝ているときの子供の呼吸が「ぐーぐー」「ガーガー」といった音を立てているとき、それはいわゆるいびき、またはそれに近い呼吸異常である可能性があります。特に以下のような原因が考えられます。
鼻づまり(風邪・アレルギー性鼻炎など)
最も一般的なのが一時的な鼻づまりによるものです。
風邪、花粉症、ハウスダストなどのアレルギーによって、鼻腔が狭くなり、息をする際に音が出てしまいます。多くの場合は一過性で、原因が取り除かれれば自然に治まります。
アデノイド肥大・扁桃腺肥大
成長期の子供には、アデノイド(咽頭扁桃)や口蓋扁桃の肥大が見られることがあります。これらが空気の通り道を物理的に狭めてしまい、いびきや異常な呼吸音の原因となります。
とくに寝ているときだけ音がひどくなる、呼吸が止まるように見える場合は、専門医の診察が推奨されます。
睡眠時無呼吸症候群(OSA)
子供でも見られる小児型の睡眠時無呼吸症候群。
呼吸が何度も止まったり浅くなったりすることで、いびきのような音が出たり、呼吸が乱れることがあります。
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寝ていても疲れが取れていない
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起床時に機嫌が悪い
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日中に集中できない、落ち着きがない
といったサインがあれば、単なるいびきではない可能性があります。
姿勢や口呼吸
仰向けに寝ると舌が喉の奥に落ち込みやすく、一時的ないびきや異音の原因になります。また、鼻呼吸がしづらく、口呼吸のクセがある子供も呼吸音が大きくなりやすい傾向にあります。
子供のいびきは放置していい?医師が警告するリスク
子供のいびきは、大人のように「疲れているから」「お酒の影響」といった一時的な理由では済まされないことがあります。もし毎晩のように「いびきみたいな呼吸」が続いているなら、成長や健康に悪影響を及ぼしている可能性を疑う必要があります。
集中力や学力への影響
睡眠中に呼吸が妨げられると、深い眠りに入りづらくなり、慢性的な睡眠不足が引き起こされます。その結果、以下のような日中の症状が現れることがあります:
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集中力の低下
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学校での眠気や居眠り
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授業への意欲の低下
これらは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と間違われることもあるため、見極めが難しく、問題の本質に気づきにくいのです。
成長ホルモンの分泌に悪影響
子供の成長には「睡眠中に分泌される成長ホルモン」が不可欠です。特に深い眠り(ノンレム睡眠)中に分泌が活発になるため、睡眠が妨げられている状態が続くと、発育に影響が出る恐れもあります。
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身長の伸び悩み
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疲れやすさ
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食欲の低下
といったサインがあれば、呼吸の異常と関係している可能性もあります。
日中の情緒や行動への影響
良質な睡眠が得られないと、子供は不機嫌・かんしゃく・無気力など、情緒の不安定さを見せることもあります。また、イライラしやすくなることで、対人関係や家庭内の雰囲気にも影響が出ることも。
脳への酸素供給が不十分になる可能性
睡眠時無呼吸症候群が進行すると、脳への酸素供給が不足する状態が繰り返されることになります。これは、記憶力や思考力の低下、さらには将来的な心血管系リスクにもつながると考えられています。
家庭でできるチェックポイントと観察法
子供の「いびきのような呼吸」に不安を感じたとき、すぐに病院に行くべきか迷うこともありますよね。そんなときは、まず家庭でできるチェックリストと観察の工夫を活用して、睡眠の状態を把握してみましょう。
睡眠中に確認すべきサイン
以下のような症状がある場合は注意が必要です:
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いびきの音が毎晩続いている
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呼吸が止まったように見える(無呼吸)
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寝汗が多く、寝相が極端に悪い
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睡眠中にあえぐ・息を吸う時に苦しそうな音を立てる
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寝起きが悪く、いつも不機嫌
これらは、単なる「疲れているだけ」では済まされない場合があります。
スマホで録音して確認する
夜間のいびきや無呼吸をチェックする方法として、スマホの録音アプリを使うのも非常に有効です。アプリによっては、自動でいびき音を検知して録音してくれるものもあり、医師に相談する際の参考資料としても活用できます。
おすすめアプリ:
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SnoreLab(スノアラボ)
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Sleep Cycle(スリープサイクル)
起床時・日中の様子にも注目
夜の状態だけでなく、日中の行動にも変化がないか観察してみましょう。
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集中力の低下やイライラ
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急に疲れやすくなった
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ぼーっとしている時間が増えた
といった変化が見られる場合、睡眠の質に問題がある可能性が高いです。
医療機関での診断と治療法
子供の「いびきのような呼吸」が長引いている、または日中の様子にも不調が見られる場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。ここでは、小児のいびきや睡眠時無呼吸症候群に対応している診療科や、主な検査・治療法について解説します。
受診すべき診療科
まずは以下のいずれかの専門医に相談しましょう:
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小児科:初期の相談窓口。必要があれば専門科へ紹介。
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耳鼻咽喉科:アデノイドや扁桃腺肥大の有無を確認。
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睡眠外来(小児専門):睡眠に特化した総合的な診断と治療。
地域によっては「小児睡眠センター」や「こども睡眠外来」などが併設されている場合もあります。
実施される主な検査
PSG(ポリソムノグラフィー)検査
いびきや無呼吸の重症度を詳しく調べるには、「PSG(終夜睡眠ポリグラフ)検査」が推奨されます。
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病院に1泊して行う精密検査
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脳波、呼吸、心拍、血中酸素濃度、筋電図などを測定
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子供の負担が少ないように配慮された施設も増加中
簡易検査(自宅で実施可能)
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センサー付き機器を貸し出し、自宅で一晩つけるだけ
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呼吸の停止回数、血中酸素濃度を計測
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小児でも対応している施設あり
主な治療方法
アデノイド・扁桃腺の切除手術
子供のいびきや無呼吸の原因として最も多いのが、「アデノイド」や「口蓋扁桃」の肥大です。これらの切除手術は比較的安全性が高く、呼吸の改善効果も高いとされています。
鼻づまりへの薬物治療
アレルギー性鼻炎などが原因の場合は、抗アレルギー薬や点鼻薬などで鼻の通りを改善する治療が行われます。
マウスピース・CPAPは小児ではまれ
成人の睡眠時無呼吸症候群で使われるCPAPやマウスピース治療は、子供にはあまり一般的ではなく、主に外科的治療や生活習慣の改善が中心となります。
まとめ:子供のいびきの裏にある重大なサインを見逃さないために
子供の寝ているときの「いびきみたいな呼吸」は、かわいらしく聞こえることもありますが、成長や健康に悪影響を及ぼす兆候である可能性もあります。とくに毎晩続くような場合や、日中の様子に変化が見られる場合には、放置せず注意深く観察することが重要です。
まずは家庭で、
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毎日のいびきの有無
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無呼吸や息苦しそうな呼吸
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起床時や日中の体調や機嫌
などを記録してみましょう。そして、必要に応じて小児科や耳鼻咽喉科を受診し、専門的な検査や治療を受けることで、子供の健やかな成長と質の良い睡眠を守ることができます。
小さなサインを見逃さず、親としてできることを少しずつ始めていくことで、将来の健康トラブルを防ぐ大きな一歩になるはずです。
参考記事
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ナゾロジー「子供の睡眠時無呼吸症候群に注意、放置でIQ低下の恐れも」
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/180179